越前時代箪笥 箪笥金具
当店では越前時代箪笥の展示を行っており、
皆様に箪笥金物の一例としてご参考くださればと思っております。
当店が店を構える越前市市街地(武生)は北国街道が通り、
昔からこの地方の経済や文化の中心地として栄えてきました。
旦那と呼ばれる店の主人達の持ち物として独自の様式を持った箪笥が発展しました。
それがこの武生の時代箪笥です。
これは明治の初め頃に製作された車箪笥。
上物を乗せた二段構え、前欅、三方に桟を回した豪壮な造りで、
人の背丈十分にあり、迫力があります。
武生の時代箪笥は明治から大正、昭和初期にかけて製作され、
明治の終わりから大正の初めにかけて独自の様式が完成されていきました。
この箪笥ではまだ様式化する前の自由でおおらかな雰囲気が随所に見て取れます。
この時代、箪笥は立派な箪笥を持っていることが旦那のステータスの一つとされ、
主人の注文に応じ趣向を凝らした箪笥が数多く作られました。
箪笥の大きさはもちろん、引き出しの割付や、金物の意匠など用途に合わせ全てフルオーダーでした。
そのため、一つとして同じ箪笥は無く、今日も私たちの目を楽しませてくれます。
また、箪笥の面白いところは、一つの工芸の分野で完成するものでは無く、
指物、漆、金物のそれぞれが仕事をして形になっているというところです。
木地だけでは、引き出すという機能がなく、それを補う金物があり、防犯のために鍵をかけています。漆は木地の表面の汚れを防ぎ、木地の杢を引き立たせる。
そして100年以上の時が流れ、木も漆も鉄もよく枯れ、言葉にならない深い味わいを放っています。
私が金物に関心を持つきっかけも時代箪笥は外せない存在です。
こういった時代箪笥は、通常、蔵や家の奥深くに仕舞われているものです。
なかなか越前市でもこうした時代箪笥を見ていただけるところはございませんので、
店土間にて展示させていただいております。
ぜひ実物をご覧いただき、この地方の伝統や文化、そして金物の魅力を感じていただけたらと思います。