木と金物
2016年7月23日 / 金物のはなし
木と金物という全く異なる素材が見事にとけあっていく。
パラドックスとも言えるであろうこれが金物のおもしろさであり、本質だと思っています。
それを表す一つの極致が日本の箪笥でしょう。
想像してみてください。明治に作られた箪笥の抽出し。金物が取れたら、それは一瞬にして陳腐な木箱。金物もただの取手です。
時が経つにつれ全く異質なものだった二つはいつの間にか互いになくてはならない存在になっていくのです。
木は枯れ絞まっていく一方、金物は暮らしの中で人の肌と触れ合い艶っぽく色を帯びる。
木は切られても生きているといいます。その通りです。
しかし、確実に死んでもいるのです。でも、その木にいのちを与えるのが金物で、金物もまた木があることで金物なのです。
これが金物を扱う私の思いです。