土壁補修 木舞、荒壁
店舗の改修で感動した壁の補修についてご紹介させていただきます。
左官工事をお願いしましたのは
越前市千合谷町の磯野左官工業 磯野勇さんです。
磯野さんは長年、県内の伝統建築の壁作りに取り組んでこられた熟練の職人さんです。
築90年近くになりますので、色々と傷みがあります。
全て直すのは大変なので、この際やっておかないと!というところを中心に補修しました。
その様子をご紹介します。
まず、屋根裏の荒壁の傷んだところを埋め補修しました。
意外と木舞がむき出しになってしまているところもあり、
外壁材を取ってありましたので、光で細かい欠落の部分もよく確認できましたので隅々まで丁寧に補修してくださいました。
磯野さんはたまたま大きな現場が控えており、1年以上寝かせた荒壁土をたくさんもってらして、
その荒壁土を使って補修してくださいました。
その荒壁土の素晴らしいこと!
越前の山土と藁スサを混ぜ、何回も混ぜ返して熟成した土は発酵したいい匂いと大変しなやなものでした。
当店の西外壁改修で外壁材を剥がすと、建物を建てた当時
隣家と接していたために、内側からのみ荒壁付をして、外側は塗り回しができず、木舞がそのまま現れた箇所がありました。
木舞は茅を主に用いた「茅木舞」でした。
茅木舞のところは茅を使って補修しました。
他にも、荒壁が落ちてしまっていたところがあり、
そこは壁を強く仕上げたかったので、竹小舞にてお願いしました。
そこで磯野さんが使ったのが「ウグイス」という太い竹釘。
柱にウグイスを打ち込み、竹木舞が外れて荒壁が浮くことがないよう、頑丈に編んでくださいました。
次は建物正面袖壁の荒壁付です。
ここも塗り回しがされず、木舞が現れている状態でした。
太い斜めに入っているのは「登り梁」です。
竹に荒縄を巻き壁をする箇所に張っていきます。
そこで重要なのが、写真で磯野さんが持っている
荒縄の「結び下げ」と呼ばれる下地です。
これを荒壁を塗る際、「人」の字のように広げ下地とすることで、強靭な壁が仕上ります。
隙間なくきっちり下地を作ります。
木舞を編む真剣な顔つき!
木舞が仕上がり記念写真。
大切なのは磯野さんが手にしている「結び下げ」です!
いよいよ荒壁をつけていきます。
結び下げを開いて荒壁に埋め込んでいきます。
それぞれの結び下げを広げて埋め込むことで、
荒縄が縦横無尽に壁中を走りこの上ない強度を生むということです。
壁際もきっちり結び下げを走らせます。
仕上がった袖壁。
後日、乾いた荒壁の様子。
結び下げの入りが良くわかります。
結び下げの下には松の登り梁が入っていましたが、
全くわからないくらい綺麗に壁が仕上がりました。
荒壁の表面には乾燥による小さな亀裂が入っていますが、
亀裂が小さいのは荒壁そのものがしなやかであるためです。
非常に良い荒壁ができ、嬉しく思っています。